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ADVERTISING WEEK ASIA2018 特別セッション”BRAND JAPAN” 実施報告

June 03, 2018

5月14日から4日間に渡り広告・マーケティング、テクノロジーの世界最大のカンファレンス「アドバタイジングウィーク・アジア2018」が東京ミッドタウン(六本木)で開催されました。
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小々馬ゼミは2016年に東京で初めて開催された同イベント内で「インサイトマーケティング」に関するセッションを企画運営し、研究報告を行いました。今年で3回目の開催となりますが、今回は小々馬先生が3特別セッション企画 “BRAND JAPAN”のモデレータを勤めましたので実施内容を報告いたします。

”Brand Japan”は、Advertising Week NY、Advertising Week Europeで開催された”Brand America”,”Brand Britain”に呼応する特別セッションとして3日目に開催されました。米国はトランプ大統領就任以降の定まらない足元、英国はEU離脱(Brexit)による社会的動揺など、今、諸外国はそれぞれの社会環境が変化する中で、国のアイデンティティ(Country Brand)が危うくなっています。国家の危機に対して広告コミュニケーションに従事するソートリーダーが集まり業界として何かできることがないかを話し合し発信した意義の大きなセッションです。

今回、東京会場では「ジャパンクリエイティブが可視化する日本のアイデンティティ」をテーマとして、「未来を見据えた日本のアイデンティティ(あるべき姿)」をインサイトすることを目的に、ブランド、マーケティング、PR、建築家、クリエイティブディレクターの第一人者・ソートリーダーにお集まりいただき3部構成での豪華な内容となりました。

モデレーター|小々馬 敦 氏(産業能率大学 経営学部 教授)
スピーカー|
・本田 哲也 氏(ブルーカレント・ジャパン 代表取締役社長)
・椎木 里佳 氏(株式会社AMF 代表取締役社長)
・鈴木 エドワード 氏(鈴木エドワード建築設計事務所株式会社 代表取締役)
・頼 英夫 氏(電通イージスジャパン株式会社 代表取締役社長)
・増渕 達也 氏(株式会社ルート・アンド・パートナーズ 代表取締役)
・近衞忠大 氏(株式会社Sinmpleshow Japan シンプルショー・ジャパン クリエイティブ・ディレクター)
・中村洋介 氏(電通アイソバー株式会社 取締役)
・岡 康道 氏(TUGBOAT クリエイティブ・ディレクター)

第1部は、提議セッションで世界における日本のポジションと、どのように見られているかパーセプションについて確認をしました。
小々馬先生から、1)Country Brandingの目的など要諦説明 2)世界における日本のランキング(事実)紹介 3)ポスト2020年を見据えたマクロな環境変化の確認
について説明。

Country Brandingのプロセスは、まず、日本人が自分のアイデンティティをしっかりと自覚し、そのアイデンティティを海外の国から見られるパーセプションの中に拡張していきイメージやレピュテーションに同一化することで「BRAND JAPAN」が成立する考え方を紹介しました。
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そして、海外の知識人やプレスの論調を集めてみると「日本が世界から期待されている役割は、超高齢化社会・低欲望消費・エネルギー問題など、今後世界の国々が直面する問題に先駆けて取り組みIT,ロボット,マーケティングなどを駆使してスマートに解決する先達国としてのポジションかもしれないこと」また「広告業界には日本のアイデンティティを海外に伝えていく役割だけでなく、日本人に自身のアイデンティティに対する気づきを与える使命が期待されるのではないか」と提議をまとめました。

続いて、戦略PRプランナーの第一人者であるブルーカレント・ジャパンの本田哲也氏が、日本が世界からどのように見られているか「パーセプション」に関して示唆をいただきました。本田さんによると日本人は世界からどのように認識してもらいたいかについてあまり考えていない。また、海外からの認識をそのまま受け入れてしまい変えようという努力をしない。海外の人々は自分たちをどう認識してほしいのかについて考えをしっかり持ち、そうなるようにプランを立てている。ここは日本人の弱いところですが、チャンスはまだ残されている。また、世界から日本のクリエイティビティは高く評価されているので、日本のブランディングに関するクリエーターへの期待は大きいと指摘されまし
た。
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第2部は、スピーカー4人が加わりさらに討議を深めました。
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中学校時代に起業してJCJKの声の代弁者として10代のマーケティングアドバイスをされている椎木里佳氏は、日本政府が提唱する「クールジャパン」は失敗と指摘され、自分たち自身を「クール」と謳うことはクールではないこと、アニメなどの分かりやすい日本固有の特性を無視していることが理由と説明。10代ではインスタグラムが浸透し、自身をどのように表現するかセルフブランディングが得意が育っている。若い世代の発言が増えていけば、日本はもっとブランディングをしやすくなると意見を紹介されました。

建築家の鈴木エドワード氏は、「日本文化は海外から取り入れた様々な価値観の融合によって構造されている。実は、日本人というアイデンティティはゼロから培われた」よって「日本人個々が自身のアイデンティティに関して学び理解しなければ後世に継承していくことは難しい。」とたいへん印象的な示唆をいただいた。
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最後のセッションでは、シンプルショージャパンの近衞忠大氏が、日本では海外と比較して文化予算がもともと低い上、その7割は海外の映画や演劇に費やされています。この比率を逆転させることで、日本人が自分たちのクリエイティビティーをより認識し誇りを持てるようになると主張した。
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日本を代表するクリエイティブディレクター、タグボートの岡康道氏は日本の方向性には改善の余地があると指摘された。そして、「日本ブランド」の概念について考え過ぎることは時間の無駄だと指摘。日本はありのままの姿にもっと自信を持つべきであると訴えられた。そして、世界における日本の立ち位置は、パーティー会場の片隅で退屈そうにして見える人と説明された。「近付いてみると彼らは決してクールでないことはなく興味深い存在なのですが少し近付きにくい。それが今の日本の姿です。でもパーティーはこれからも世界中で行われるので焦る必要はない、まだ間に合うことを理解すべきだと思います。」と熱いセッションを締められました。
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このセッションの様子は国内外のメディア・プレスに記事掲載されました。
”BRAND JAPAN”国家ブランディングというたいへん大きなテーマでしたが、これからの広告業界のアプローチの方向に関して多くの示唆がありました。

貴重な機会をいただいたAWA2018運営事務局の方々、ご登壇いただいたスピーカーの方々、そしてご来場いただいた方々に深く感謝いたしております。
ありがとうございました!