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JMAセミナーレポート|国境を超えて愛されるブランドの秘話。

March 06, 2016

こんにちは。

1期生の中野さやかです。

今回私がレポートするのは「国境を超えて愛されるブランドの秘話。」ということで、小々馬先生と中央大学ビジネススクール教授の田中先生がアドバイザーをされている、「日本マーケティング協会 グローバルブランドマネジメント研究プロジェクト」主催のセミナーに参加してきました。

第三回を迎えるセミナーのテーマは「ローカル市場でグローバルブランドをどう生かす?~パッケージデザインの現場に学ぶ~」でした。本社と現地、双方の意思・意向はどうして同じにならないことが多いのか、そしてその違いは消費者に対して最もダイレクトにブランドの価値を伝えることができるパッケージにはどう反映されているのか実務家の方々に焦点を当ててお話しをいただきました。

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 ご講演者の方々です。
当日の内容は下記の通り進行しました。

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それでは順にレポートしていきましょう。

◆グローバル化が進んでいる現代で

日本で、あるいは特定の国や地域で成功した商品を新たな国に展開していくことが今後ますます増えていくことが考えられます。そういったグローバル企業でお仕事をされている方、また「日本ブランドを世界に拡げたい」「多国籍な人が集う場でクリエイティブに働きたい」と考えている学生は多いのではないでしょうか。私もその内の一人です。

今回はグローバルブランドを学びつつ、そのような環境で働くことについて考えることができました。

◆ブランドデザインのローカライズの現場から

 まずはじめに「ブランドデザインのローカライズの現場から」というテーマのもと、ランドーアソシエイツCEO 小松 基さんと同社のクリエイティブディレクター 森山みきさんにお話しをいただきました。お話しの中では、グローバルレベルでの一貫性とローカル・マーケットでの適切性のバランスが大切とおっしゃっていました。

 グローバルレベルではブランドの価値が中核となるため、ブランドエクイティの遵守を各国のローカルブランドオペレーターに求めます。一方でローカル・マーケットをみているローカルブランドオペレーターは消費者への浸透が任務となるため、自社商品のカテゴリーでの消費者からみた「顔」の際立ちを重視しています。この違いの中でどうプロジェクトを進めていくかをお話しいただきました。

 

「やってはいけないことを明確化させることで自由になる」

ブランドの有無/無形の資産を言葉とビジュアルで可視化することがグローバルブランドを共有するうえでは大切だとお話しをいただきました。今回可視化の一例としてご紹介いただいたのは「ブランドブック」です。

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 雑誌「エル・ジャポン11月号 NOV.2012」より

 ブランドブックとは雑誌のようなもので、そのブランドの価値観が凝縮されているものです。ブランドブックがあることで「この商品・サービスはブランドの世界観を壊していることにならないか?」そう考え立ち止まった時に、このブランドブックにのっていて不自然でないかどうかという判断軸を持つことができます。

このように「やってはいけないこと」を明確化させて身動きがとれなくなる状態を阻止します。 

 

「上から目線のお姉様ブランド?いつも暖かくしてくれるほっこりブランド?」

 この考え方は、SNSやブログなどで自分を表現する場面が多い現代で無意識に使われているのではないでしょうか。今後パーソナルブランディングとして注目されるかもしれませんね。 ブランドのルールの中でご紹介いただき私が特におもしろい!と思った考え方は、「トーン・オブ・ボイス」です。トーン・オブ・ボイスとは、このブランドはどんな目線から、メッセージを伝えてくるか、そのブランドをより「らしくする」ための特定の表現(文体・語調)を戦略的に決定することです。ブランドの表面に出てこない「人格」「文化」「哲学」といった部分を表現することができます。

 

◆味の素(株)事例:ローカル?グローバル?パッケージデザインと広告の企画&制作現場からのレポート in ASEAN

味の素株式会社 広告部 クリエイティブ統括部長の名久井 貴詞さんから実際に現場でグローバルブランドのパッケージデザインやCF制作をなさった経験談をお話しいただきました。名久井さんはASEANを中心に、CM企画から制作までのクリエイティブを手掛けられていました。

 

「『うまみ』は世界共有」

おそらく、人と人がコミュニケーションをとる上で真っ先にみんなが行うことは共通点を見つけることだと思います。「同郷」や「同じスポーツをしていた」ことって一気に人の距離を縮めますよね。

しかしながら、グローバル規模で考えると共通点というのはなかなか見つけにくいものかもしれません。私がシンガポールに行った時、私は現地の植物園にすごく興味があるのに、現地の女の子は植物園には行ったこともなくて、日本のアニメに興味がある。といったかたちで、なんだかチグハグしていておもしろかったことを思い出します。

ここで最強(私にとっては目から鱗でした。)の共通点を持っているのが味の素の「うまみ(グルタミン酸)」です。

あじ1味の素 公式HPより

あの「うまみ」って世界共通だったんですね。
私びっくりしました。

そんな最強な部分を持ってしていても起こった出来事を名久井様にお話しいただきました。うまみという共通点はあるものの、国民が好きとされる色や、食卓の場面、宗教など様々な違いがあります。

あじ味の素公式HPより 「インドネシアの商品紹介:Masako®(マサコ)風味調味料 / SAORI®メニュー用調味料」

 

 「郷に入っては郷に従え」

自社の商品がその国で広がっていくことを目的に見据えつつ、CMの撮影現場で生まれる驚きのエピソードやその国特有の料理を楽しんでいらっしゃいました。名久井さんからは「プロセスをも楽しんでいる」という印象を受けました。

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名久井さんへ「現地での生活はどうでしたか?」と質問されている方がいらっしゃいました。名久井さんは「現地の生活を深く理解するためにも現地人と同じような生活をしていた」とおっしゃっていました。違いを受け入れその国をリスペクトをする。

働いて稼いだ資金を欲しいものに使うことで幸福感を得るのではなく、働くことに情熱を傾けて幸福感を得ている様子がうかがえました。

 

本質的なものの追及に、ブランドの成功はあるのかもしれない

Eat Well, Life Well.

これは、味の素のグローバルメッセージです。食べたものが、身体をつくること。これは、世界中のどこでも、誰にでもいえることです。「食」を突き詰め、その国々の「美味しい」をつくることで、味の素は愛されるブランドとなったことを教えていただきました。

 

愛されるブランドづくりって難しいですね。でも楽しいですね。

途中自分の気持ちの傾く方向性に行き過ぎてしまった気はしますが、以上でレポートを終わります。

愛されるブランドづくりって難しいですね。

今日得たものをまとめると、ヒントは「わざと敵をつくること」なのではないかと思います。

「敵は己の中にあり!」という言葉もあるように、同じものをつくるチームの中でも、それは必要なことのように思います。

ブランドブックをつくることで規制をつくり守るものを明確にすることや、マーケティング部隊とデザイン部隊が違う角度からみた意見を交わすことで、本質的なものがみえてくるのではないでしょうか。

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私がセミナー中に終始感じていたのは、5年後どうなっているかわからないな。というワクワク感でした。もちろんグローバル化の進展は今後さらに速度を増していくでしょう。

ブランドの価値を売る日本企業は、より「日本の魅力や質」について掘り下げて、特色(独自性)を掴んでいくと思います。それってまだまだ、私たちが気づいていないことにはっとさせられる機会が増えるということですよね。

どんな新しいアイデアが生まれるのだろうと思うとワクワクします。

「読めない時代」だからこその楽しみ方は、ここにあるのではないでしょうか。

一緒につくっていきましょう! 

文責:中野さやか