Member blog / メンバーブログ

トップページ > メンバーブログ

『AgeMi!マーケ!2030』セッションレポート【第3回】 学生の提言!「リアル!高校生・大学生のスマホ生活!」

March 25, 2019

2019322日(金)開催
産業能率大学 自由が丘キャンパス IVYホール
にて、
AgeMi!マーケ!20302020年メディアと若者の関係は?

図1

セッションレポート、第3回は、学生の提言!「リアル!高校生・大学生のスマホ生活」をお届けします。

なお、《プログラム》のPDFを下記からダウンロードいただけますので合わせてご覧ください。

https://www.kogoma-brand.com/report/8676/

セッション内容、講演者紹介、記念対談(境治×小々馬敦)、小々馬ゼミの活動紹介、若者研究者紹介(8社)など読み応えのある編集内容です。

 

③学生の提言!
 産業能率大学 経営学部 小々馬ゼミ 4期生 遠藤聖奈 小林将也
  「リアル!高校生・大学生のスマホ生活」

図1

 

本セッションでは小々馬ゼミの4期生2名が登壇し、
若者の購買行動を中心に若者の生活価値観や理想とするミライの姿を提言いたしました。

まず、消費行動の調査活動の中で、若者の購買プロセスはAIDMA・AISASではないという仮説が生じました。

 

図3

私たちが最も違和感を覚えているのは、社会が「バズ起こし」に一生懸命になっているということです。そもそもAIDMAはショップで購入することを前提に、マスメディアの力であらかじめマインドシェアを高めておき、消費行動に結びつけるというマスプロダクトのマスマーケティングです。 しかし、インターネットの普及により購買までの流れはAISASに代表される新しいモデルにシフトしていきました。

AttentionとInterestが最初にあるモデルは原則、影響力が強いマス広告、特にTVを使うモデルだと思いますが、私たちが感じているのは、若者のTV離れによりTV広告の効果が低くなったことで、TVが果たしていたAttentionとInterestの獲得、つまり「強いAttentionで興味を引く」という役割を代用するものが必要となり、それがSNSでバズを起こすことが最適だと捉え、冒頭でもお伝えした通り、「バス起こし」に一生懸命になっているように思えます。

しかし、これまでの調査からも私たちのリアルからも、若者たちは「バズ」を探してSNSを見ているわけではないですし、バズったからといって購買につながることもあまりないと感じています。これは若者のインサイトが関係していて、若者は「面白いもの」を買うのではなく「役に立つ」から買います。バズった動画は面白く、確かに興味を引きますが、思考はそこでストップし、
「欲しい」や「調べる」というステップには繋がっていきません。

 

では、若者たちの購買プロセスはどうなっているのでしょうか。

私たちは考えたのは「EIEEM」です。それは「遭遇(Encounter)・気づき(Inspired)・勇気付け(Encourage)・イベント(Event)・真似(Mimic)」の5つで構成されています。

 

図4

これらの流れが顕著にみえるのは、女子学生が美容用品を購買するときなのですが、まず、その商品を発見するのはあくまでも『偶然』であることがポイントです。何かを探してSNSをなんとなくSNSやYouTubeを閲覧している際にたまたま見つける、偶然性が高いのでここでは「遭遇(Encounter)」と表現しています。

次に「気づき(Inspierd)」が続きます。ここでいう気づきとは、感化されるという意味合いが強く、自分の生活を豊かにしてくれそうなコンテンツに触れたとき、発奮される感覚を得ます。このステップで起こるアクションとしては、「保存」が挙げられます。フォローやアーカイプ、スクリーンショットを撮るなどして自分ごと化し、いつでも確認できる状態に編集します。

さらに「勇気付け(Encourage)」のステップに続きます。それが本当に良い商品なのか、自分に合うのか、機能を使いこなせるのかなどをチェックします。ここではYouTubeを使うケースが多く、使用動画を確認することでイメージをより鮮明にしていきます。店舗で行うテスターをオンラインで行なっているという感覚に近いです。

そして、「イベント(Event)」が発生します。従来であれば「購入(Action)」で表現されるところですが、私たちにとっては購入するというイベントなのです。キャッシュレスの波が押し寄せる現代なので、若者もECを頻繁に利用しているように思われがちですが、まだまだ実店舗で購入することが多いです。これは、高校生はクレジットカードを保有できないことも大きな要因ですが、ここも若者のインサイトが関係していて、友達を連れて実店舗で買い物をするという「イベント」が楽しく、やめられないのです。なので、購買体験の楽しさが可視化されていると、より購買に繋がりやすいともとれると思います。また、購買後、商品を手に持ったときに感情は特別なものであり、それが瞬時に発生することも大きなメリットです。

最後に「真似(Mimic)」です。ここも従来であれば「共有(Share)」で表現されるところですが、この表現に少し違和感を覚えます。なぜなら、『みんなに教えたい!』という心境よりも『Inspiredされた投稿の「真似(Mimic)」をしたい!』といったほうが適切だからです。教えてあげることで得られる優越感よりも、真似することで得られる評価や達成感の方が若者のインサイトを捉えていると思います。

若者はデジタル環境が整った時代に生まれ育った「デジタルネイティブ」であり、SNSに触れている期間も、下手したらどの世代よりも長いです。SNSを駆使することは自然とセルフブランディングにつながりますが、そのことも本能的に理解しています。「物知りで流行に敏感な私」よりも「自身が憧れた世界観を表現している私」に近づきたいので、憧れた世界観を表現してる投稿の真似をします。

このように研究活動に取り組んでいると、私たちにとって当たり前も、社会人の方々にとっては見えにくい部分が多くあるということを感じます。今回は代表的な2つの例を紹介します。これらは、レガシーのマーケティングを否定しているわけではありません。顧客層や商品カテゴリー、状況に応じて多様化するマーケティング手法を使い分けていきたいという私たちの使命感から捉えた観点として、お伝えさせていただきます。

まず1つ目は、私たちの購買動機に関してです。私たちは情緒的価値より機能的価値を気にしています。

図5

この図は、商品や広告のコンセプトとして良く見るチャートです。レガシーのマーケティングでは、商品が氾濫することでコモディティ化し、機能では差別化できないので、情緒的価値で差別化すると学習するのですが、私たちは、そもそも商品が持つ情緒的価値の差別化はあまり意識して買い物していません。それよりも、商品で何ができるのか「機能」をちゃんと知りたいのです。

商品が持つ機能をどのように自分の生活で活かすかは自分たちで決めるので、判断材料を求めています。ブランドが発信する情緒的なイメージ広告はあまり響かないですし、私たちが思っている世界観や実生活のシーンと違うことも多いので、却って冷めてしまいます。

先程お伝えしたように、若者の購買はたまたま買う「偶然性」が大きいのですが、たまたま購入した商品の背景にある、企業がなぜこの商品をつくったのかというフィロソフィーやパーパス、ブランドエッセンスが伝わると、「これでよかった。使い続けよう。」というように企業と商品との信頼関係、エンゲージメントを高まるのではないでしょうか。私たちは、そういった顔の見えるストーリーに共感します。

 

スクリーンショット 2019-03-24 22.15.46

私たちは、商品のターゲット設定を意識することなく「商品」を購入することが多いです。なので、「男性用」「女性用」を気にせずに化粧品や服を使いこなします。

例えば、私(小々馬ゼミ4期生|遠藤)は夏になると「GATSBYの汗ふきシート」を使用します。GATSBYは男性向けの商品としてブランド展開し、機能的価値として強い爽快感を提供していますが、情緒的価値としては男性の共感を得られるようなイメージ広告を展開しています。しかし私は、機能の部分を重視しているため、情緒的価値である男性向けの部分は全く気にしていません。

また、買っている対象が”モノ”なのか”コト”なのかと区別する意識もありません。「どのように使うか、役に立つのか」という”コト”を集めてカタチになったものが”モノ”なので、”モノ”を買うことは”コト”を買うことと「=(イコール)」です。レガシーのマーケティングでは、ターゲットを男性用、女性用、年代別というように市場を細分化することで、却って必要以上のブランドを販売しているように思います。優れた機能があってコスパの良い商品を、皆で使いこなす方がスマートでエコだと思います。若者に対しては、「ライフスタイル別セグメンテーション」のターゲット論に重きを置くよりも、生活時間の中に、どれくらい多く商品のことを意識する瞬間(タッチポイント)をつくることができるのかという生活時間への寄り添うセンスが大切なのではないかと思います。

 

図7

2つ目は、若者を「〇〇系女子」とはくくれないということです。ビジュアルで見えるライフフスタイルから、若者をセグメンテーションすることは不適切です。なぜなら、私たちのファッションは、デート、アルバイト、旅行など、その日の大事なイベントに合わせて毎日変化するからです。社会人の方とお話ししていると、若者をライフスタイル別にセグメンテーションし、クラスタリングした属性でターゲット設定しているとお聞きするのですが、「〇〇系女子」とくくれる人はごくわずかです。あくまでも「〇〇系女子」は”場面”に現れるのであって、人格を表すものではありません。ファッション雑誌が売れなくなってきたのも、そういう背景があると思います。私たちは、「価値観や考え方」に共感してグループやコミュニティの中で生活しているので、言ってしまえば複数の「〇〇系女子」を使い分けで生活しています。

最後に、そんな私たち若者が共感できる価値観を紹介します。

 

図8

これらは一般的にいわれている価値観のシフトの中から、私たちが共感できるもの、10年後の2030年、私たちが社会人として活躍している頃にはそうなっていたいと思う価値観を並べています。これは、私たちのゼミが探求していくテーマである「人口が減少する社会でのマーケティングのあり方」につながるのですが、これからの幸福感は、『現在社会の承認欲求・自己実現』から『アイデンティティの尊厳』へとシフトすると考えています。

現在社会でのSNSで表現されているのはフェイクライフ(背伸びして一時的に手に入れた生活のひととき)を送る自分であり、本当の自分を表現する場所ではないと自覚しています。盛った自分を評価されるのも嬉しいですが、そのときに得られる感情は達成感であり、刹那的で儚いことに気づき始めています。投稿に対する義務感が強くなり疲れ始めてもいるので、徐々に利用態度のシフトが考えられますし、一部ではすでに見え始めています。

 

スクリーンショット 2019-03-24 20.57.29

そんな、私たちZ世代の成し遂げたいミライの姿は「今まで誰もがそう思っていた価値観の社会」になることです。それは、お金よりも社会から寛容されることを大切にするフラットでオープンな社会、人間中心の超スマート社会です。

 

次回は、セッション③「高校生の自宅内メディア利用の実態」

ビデオリサーチ ひと研究所様のセッションです!

図9

 

最後に、この場をお借りして。

ご来場いただきました皆さま。ご多忙の皆さまのお時間をいただき、特に、年度末の金曜日という猫の手も借りたいくらいお忙しいことが容易に想像できる中お越しいただき、誠にありがとうございました。私たち小々馬ゼミが主体となり運営した初めてのイベントであり、ご不便をおかけしてしまったこともあるかと思いますが、優しく、そして温かくご対応くださり、大変助けられました。心から感謝申し上げます。

私自身、2019年を迎えると同時に本イベントで登壇することが決まり、約3ヶ月かけて準備してまいりました。通年で研究を行なっていたためお話ししたい素材は山ほどあり、もはや短い時間に収めることのほうが難しかったですが、その中で、実務家の皆さまをはっとさせられるかに重きを置き構成いたしました。学生という身分にも関わらず大勢の実務家の前で物申すという状況に、準備段階から過去経験したことがない程の責任と緊張を感じておりましたが、発表後、ポジティブな声、リアクションがたくさん届いてまいりまして、意義のある時間を提供できたことに喜びを感じます。

企業のマーケティング活動はシニア層に焦点する傾向があります。超少子高齢化が進む日本において、ターゲットのボリュームや購買行動のポテンシャルを考慮すると当然のことかもしれませんが、同時に次世代の中心消費層である若者はマイノリティになっている現実があります。そのため、実際に企業はあまり若者のことを理解していないという現象が起き、若者をターゲットに設定した商品のコンセプトやイメージ広告が「若者に刺さっていない」「メッセージが届いていない」という現実をよく目にします。これは、社会人の皆さまが考える若者と実際の若者にGAPが生じているからだと考えています。このGAPを埋めるための活動こそが、私たちの存在意義を発揮できるポイントだと信じ、若者の生活価値観を可視化することに、真摯に向き合っています。

まだまだ未熟な私たちですが、これからも”若者ならではの視点”を大切にし、来るべきミライが全ての人にとってHappyになるよう、挑戦し続けます。
本イベント、そして本記事をご覧いただき、ご興味いただけましたら、一緒に考え抜き行動を共にする機会をいただけましたら嬉しいです。

産業能率大学 経営学部 小々馬ゼミ
4期生ゼミ長 小林将也