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『AgeMi!マーケ!2030』セッションレポート【第7回】ラップアップセッション「2030年にテレビはこうあってほしい!」

March 30, 2019

2019322日(金)開催
産業能率大学 自由が丘キャンパス IVYホール
にて、
AgeMi!マーケ!20302020年メディアと若者の関係は?

図1

最終回の今日は、ラップアップを紹介します。

なお、《プログラム》のPDFを下記からダウンロードいただけますので合わせてご覧ください。

https://www.kogoma-brand.com/report/8676/

セッション内容、講演者紹介、記念対談(境治×小々馬 敦)、小々馬ゼミの活動紹介、若者研究者紹介(8社)など読み応えのある編集内容です。

ラップアップ「2030年にテレビはこうあってほしい!」
   〜テレビのミライをAgeMi世代とホンネで語り合おう!〜
コーディネーター:境 治氏 メディア・コンサルタント
パネリスト:
日本テレビプロデューサー  高明希 先生「今日から俺は!!」担当
日テレラボ  調査研究部 主任 加藤友規先生 
産業能率大学  経営学部 教授  小々馬 敦

学生パネラー:経営学部 マーケティング学科 学生  

 1日を締めるラップアップは各企画セッションの流れを受けて、実務家(メディア・マーケッター)と大学生が「テレビのミライ」に関して世代を越えて対話するセッションで、メディア・コンサルタントとして活躍されている境治先生のコーディネイトをお願いし1時間のダイアローグを実施しました。(境さんのセッションレポートは本記事末にURLを記しますので参照ください)

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「テレビのミライ」を考えるにあたり、セッション①では「若者はテレビCMがうざいのではなく、楽しんでいるコンテンツを広告で途切れる時間が嫌い」なこと、映像+テクノロジーによって若者の生活時間に寄り添い入り込める機会があるのではないかという示唆。セッション②では若者のスマホ動画と消費の関係に関するリアルな報告、動画がバズっても購買には繋がらない。なぜなら、役に立つものが欲しいのでありおもしろいものが欲しいわけでは無いからというホンネが紹介されました。セッション③では、高校生の自宅内での生活時間の実態をビジュアル化し共有し、テレビとネット動画は相反していないこと、若者の生活時間を捉えるためにどのような映像コンテンツのマッチングが良いかの示唆、セッション④では、若者は情報過多の中、自分に必要な情報どうかを数秒で判断するが、動画の視聴により感情を動かし共感にいたるまでは時間がかかるために、長尺の動画視聴でないとブランド好意などの意識・態度変容につながらないこと。シンプルで解釈が容易なストーリーがあること、特典などの現実的な提案がある動画が若者の心を動かす動画であるとの示唆がありました。そして、直前のセッション⑤では、「若者はテレビが好きなのに、探しても自分たちが面白いと思える番組が見つからない」「学生はお金を使わないからマイノリティな扱いをされている気がする」「もっと、自分たちが面白く役に立つと感じる番組を放送して欲しい」という学生からのラブコールがありました。

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ラップアップは、日本テレビが2018年秋に放送したドラマ「今日から俺は!!」を学生が面白い!と受け入れたコンテンツのケースとして取り上げました。

実は、このラップアップ企画には背景があり、紹介させていただきます。昨年12月初旬、YAHOO!ニュースにコーディネーターの境治先生が、小々馬 ゼミが実施したアンケート調査結果を紹介してくださった記事が掲載されました。(下記2件参照)

「今日から俺は!!」が学生に見られている。テレビ離れはコンテンツ次第かもしれない。(12月3日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaiosamu/20181203-00106315/

「今日から俺は!!」大学生調査から見えたものは「福田雄一ブランド」(12月4日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaiosamu/20181204-00106519/

始まりは、2018年秋に「InterBEE2018 CONNECTED」の企画セッションにゼミ生が参加させていただいた際に、今見ているドラマある?という境先生の質問に、ほとんどの学生が「今日から俺は!!」と答えました。「大学生はテレビドラマを見ていないのでは?」という印象を持っていましたが、大学内で約200名にアンケート調査を行なってみると、なんと、女子学生では、毎回見ているという回答が38.1%。視聴経験は59.0%と非常に高い数値が確認できました。第7話放送後の調査で、ビデオリサーチ社公表の世帯視聴率が10%を超えた(10.6%)週です。大学内の限られた母集団調査でしたが、高校生にインタビューしてみても同様(それ以上)の高い視聴実態が見えてきました。
調査概要、分析要約は下記ゼミHP記事(2件)を参照ください。

YAHOO!ニュースで取り上げられたTVドラマ『今日から俺は!!』【学生視聴調査】の内容を報告!その①

 

YAHOO!ニュースで取り上げられたTVドラマ『今日から俺は!!』【学生視聴調査】の内容を報告!その②

調査インタビューから、なぜ「今日俺!!」が学生に支持されたのかを把握できたのですが、ドラマを企画制作されたサイドでは、どのような活動をされていたのかをお伺いしたく日本テレビさんにお願いし、担当のドラマプロデューサーの高明希先生にご登壇をいただくことができました。

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加藤先生から「今日から俺は!!」のSNSプローモーションの結果データを説明していただきました(境先生のレポートで紹介されています)。プロデューサーの高先生自身が直接、視聴者層とのコミュニケーションに携わられていたことが紹介され、お互いに「顔の見えるSNS展開」が「共通の想い」を形成し大きな共感の輪に広がっていたことがわかりました。前述した境先生の投稿の際もドラマの公式ツイッターアカウントから、「調べていただいたんですね」とリツイートがあり、福田監督やキャストの方々のリツイートが重なっていく様子を見ていて、思いが共感で広がっていくライブ感に興奮したことを思い出しました。

若者へのSNSアプローチの大成功!と言えば簡単ですが、学生の観点から見ると、テレビとSNS(ネット)の間の区別意識は無く両者は生活時間の中に当たり前に共存しています。学生が「今日から俺は!!」について声高く話をするときに、テレビドラマの話をしているのでなく面白いコンテンツの話をしているのだという感覚を受けましたが、テレビとネットの融合が自然になされていたために、学生の生活時間の中で違和感なく受け入れられたのかと感じました。
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大学生はTVCMをスルーする傾向がありますが、映画のトレーラーやドラマの番宣はきちんと見ています。高先生から、「今日俺!!」の番宣は映画トレーラーを意識して制作されたという裏話を紹介いただき「なるほど!」と納得の声が会場に上がりました。

高プロデューサーのお話で印象的だったのは「相手の顔を思い浮かべながらツイートする」という言葉でした。大学生といえども、SNSを利用する目的は、ソーシャル(社会・世間)とつながって自分を拡張するネットワークというよりも、顔の見える友人や知っている有名人とつながれるツールという意識に留まっています。そこには、「顔が見えることの信用・信頼」が情報を選択する際の判断基準にあると思います。

番組愛が大きく、一番番組のことがわかっている高先生自身が、想いを込めたツイートをされることで、番組が持っている様々な魅力の切り口(キャストの魅力、福田監督作品の魅力、アドリブのおもしろさ、おもしろいシーン、かわいいダンス・・・このドラマはこれがたくさんあります。)ごとに、想いのコミュニティが形成され、その層(クラスター)が積み重なっていくことで大きな共感コミュニティ(規模はマスだけど想いと顔が見える快適な応援集団)が出来上がったと言えるかもしれません。

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ラップアップの後半は、20数名の大学生も参加してのダイアローグです。境先生から、テレビやネット動画視聴の実態やテレビ番組への期待などの質問を数多くしていき、年齢差の中にある解釈のギャップを埋めることをしました。

その中から、印象的だった対話をひとつ紹介します。
テレビ局の方には何かヒントになるかなと思います。
(若者対象の広告を制作されている方にも)

Q「どんな番組がみたい?」
A「大人が勘違いしているのは、高校生には高校を舞台とする学園ものや高校生が参加する情報番組と考えているかもしれませんが、私たちは自分の世代のことは良くわかっているので興味ありません、高校生が出演して高校生のことを話しているのを見て面白いのは大人たちではないでしょうか。それよりも、自分たちが将来迎える年齢のことに興味があります。例えば、大学生の私たちには「東京タラレバ娘」はその意味で見たいドラマでした。高校の学園ものは中学生以下の子には興味が高いけど、高校生には受けないかも・・・・」

一人の女子学生の意見でしたが、共感するかを聞くとほぼ全員が賛同とうなづきながら手を高くあげました。

60分間の限られた時間で、「ミライのテレビ」に関する結論までは至りませんが、参加された方々にはひとつ、ふたつ、目からウロコがおちるような学生の示唆があったようで、後日、社内で共有したいので資料が欲しいというご要望を多くいただきました。
開催して良かったとたいへん、嬉しく思います。

本日で、セッションレポートを終了いたしますが、今回のイベントで縁をいただいた皆様と、今後も一緒に研究活動をさせていただければ幸いです。

参照|
コーディネーターを務めていただいた境先生が主宰される「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」でも、本ラップアップの模様を紹介されています。(一部無料で閲覧可能です)

「今日から俺は!!」のヒットはSNS活用とプロデューサーの”想い”から生まれた

https://mediaborder.publishers.fm/article/20118/

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レポートの連載の最後に、ご参加の皆様、ご協力・ご指導をいただきました皆様方に厚く御礼を申し上げます。
誠にありがとうございました。

産業能率大学 経営学部
小々馬 敦
小々馬ゼミ一同