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YAHOO!ニュースで取り上げられたTVドラマ『今日から俺は!!』【学生視聴調査】の内容を報告!その①

December 09, 2018

12月3日、4日の両日、YAHOO!ニュースにメディアコンサルタントの境治さんが、私たちのゼミが実施したアンケート調査結果を紹介してくれた記事が掲載されました。

「今日から俺は!!」が学生に見られている。テレビ離れはコンテンツ次第かもしれない。(12月3日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaiosamu/20181203-00106315/

「今日から俺は!!」大学生調査から見えたものは「福田雄一ブランド」(12月4日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaiosamu/20181204-00106519/

この記事をキッカケに「今日俺」LOVERSのツイートがつながっていき、福田監督やキャストの方々からもコメントをいただくなど、調査を実施した私たちには、この上もなく嬉しい週となりました。また、テレビや若者のマーケティングに興味をお持ちの企業や研究者の方々からも調査内容を詳しく教えてほしいと連絡をいただきました。

そこで、数回に分けて、上記の記事の元になった調査分析に関して報告させていただきます。長文になりますが、興味あるパートのみでもお読みください。

まず、そもそも、なぜこの調査を実施したのかを紹介させていただきます。小々馬 ゼミでは、若者(高校生と大学生)の価値観と消費行動を研究しています。目的は、10年後の消費層の中心となるアラウンド20世代の生活の中に現れ始めているだろう未来を見つけること。「私たち(学生)は未来をこうしたい!!」という想いを、活躍されている上世代のマーケッターやクリエーターの方々に提言すること。そして、「ハッピーなミライ」を世代を超えて共創するために、互いの価値観を尊重し合う世代間の対話(ダイアローグ)の機会をつくる活動を行なっています。

「若者のテレビ離れ」ではなくて「テレビの若者離れ」

今年10月に関東・関西エリアで実施した1,000人の高校生へのWEB調査では「高校生の約7割は毎週見ているテレビ番組がある。」また、「家族で過ごすリビングではいつでもテレビがついている(76.1%)」という結果でした。「若者のテレビ離れ」。大人が使うこのフレーズは学生たちにはピンときません。確かに、大学生がテレビ番組を見る時間は1日1時間程度と多くありませんが、テレビは家族と過ごす楽しい時間に必要な存在であり、リビング(昔のお茶の間)で、「面白い」コンテンツを探してみています。しかしながら、「自分たちの世代に向けた面白いコンテンツが見つかりにくい場所がテレビ」という意識があるのではないかと仮説を持ち、インタビュー調査で検証していました。

境さんの記事にあるように、10月に開催されたInterBEE CONNEXTED 2018の会場で大学生は、テレビドラマをほろんど見ていないと発言していましたが、「今日から俺は!!」は家族一緒に見て盛り上がっていると言います。次の日に大学キャンパスで学生達にヒアリングしてみると、皆(10名中、10名、本当に全員が)、目をキラキラして番組の見どころについて語り始めました。私自身がこのドラマ、そして福田雄一監督の歴代作品のファンであったこともありますが、「80年代のつっぱりドラマが大学生に人気?いったい、何が起こっているのか、きちんと調べてみよう!ここに、仮説検証のヒントがありそう!」と思い立ち、私の授業の受講学生を対象にWEB調査(205サンプル)を行いました。

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  汐留シオサイトに掲出されている番組宣伝OOH

前置きが長くなりました、では調査からの報告です。

まず、調査概要です。

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・学年別、性別、視聴行動別などクロス集計しました。
・対象学生は経営学部でマーケティング専攻者が多く、情報感度が高い学生が母集団に多く含まれています。情報量の大きな都会に生活し、SNSでの動画視聴時間が多い学生層を代表していると捉えています。ちなみに、当学(産業能率大学)「学生のメディアコンテンツ利用調査」は下記から参照いただけます。
http://www.sanno.ac.jp/univ/cb/surveyreport/report2018.html

1. 全体の4割近く(36.5%)が毎週視聴。
 視聴経験者は約6割(56.6%)。

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・この結果は驚愕でした。第7話放送後なので、ビデオリサーチ社公表の世帯視聴率が10%を超えた(10.6%)週です。
・女子学生に限ると、毎回見ている回答が38.1%。視聴経験は59.0%とより高くなります。

学生を対象とする定量(アンケート)調査の数値は、時に「学生の肌感覚」に合わない場合があるので、私たちのゼミでは、調査後にインタビューを重ねてリアルさを検証しています。数値がリアルに近いことを確認しました。そこで見えてきたのは、放送日の翌週に、ドラマで面白かったシーンが、教室、バイト先で話題になっているというまるで「昭和の人気テレビドラマ」のような現象でした。(学生達には意味がわからない感覚・・・)

 

2.「今日俺」をどのように見ているのか

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・自宅のTVで見た(55.1%)、録画してみた(53.4%)の両方が半数を超えています。複数回答の集計なので、このグラフからどれくらいの学生が放送時間に見ていたのかはわからないので、
インタビューと、私の授業教室で挙手してもらい確認しました。

・結果は、自宅で放送時間に家族と一緒に見ているという回答が半数から6割程度。視聴学生の半数以上は放送時間に見ていました。興味深いのは、「絶対見たいから録画」しておき、家族と一緒に見た後で、もう一度見直すという女子学生が多くいたこと、間に合うように早く帰宅するという意見(これも昭和的!)。また、バイトで遅くなってしまい放送時間には間に合わなかった、録画してあるので直ぐに見られるけど、次回の放送の直前まで我慢して、2話続けてみることで楽しさを倍増させる!という意見も。

・大学生には ①放送時間に合わせて視聴する概念がありません。好きなコンテンツは一番楽しく見られる環境(時間、場所、仲間)で見たいのです。テレビ局のデモグラフィックな時間帯の編成ではなかなか届かないですね。F1(20−34歳)のくくりの中で一緒に見られるのも違うと思っています。②「見逃し」という概念もありません。見たいコンテンツ、例えば推しメンが出演する番組は何としても見るための手段、全てを講じます。好きなコンテンツを「見逃す」なんて失態はありえないようです。とすると、「見逃し配信」というフレーズは大学生には意味が通じないですね。

・また、スマホで見た(7.6%)学生が想定外に低いことも注目です。普段から学生のテレビ視聴の状況を観察していますが、ジブリ作品映画がテレビで放送されると、その放送時間に合わせて帰宅してテレビで見ています。視聴者が同時につぶやくなどの仕掛けもあるのでしょうが、特にそれが目的になっているようではないですし、何回も見ているコンテンツなのに、
私は学生達が「今日俺」のことを楽しそうに話す際に、ジブリ作品映画のことを話す時と同様の何かを感じました。作品自体だけでなく、監督、声優キャストなど、作品の世界観、作品の背景にある送り手の美学(センス)を感じ取って共感しています。
結果、「裏切られることのない、外せない」コンテンツという信頼のパーセプションが形成されていると思いました。これがYAHOO!記事にあった「福田作品はブランド!」という私の分析に繋がるのですが、福田作品には、何度もみたい、スマホよりもテレビで見たい、みんなが同じ時間に見ている共有感を味わいたいといった動機付けが生まれていると考えます。
次回、詳しく解説いたします。

・そして、「今日俺」が日曜日の午後10時30分から放送されている時間設定の秀逸さも見てとれました。裏番組との関係だけでなく、大学生の在宅状況とのマッチングです。調査から日曜日の午後10時30分の在宅率は45.3%と想定以上に高い数値が確認されました。平日はアルバイトやサークルで遅い時間に帰宅するも、日曜日のこの時間帯はアルバイトや外出から戻ってリビングで家族と過ごしている時間帯にあたります。テレビの前に座り(寝て?)、テレビ番組をBGM(なんとなく見ながら)、自分のスマホでLINEしたり、YouTubeやインスタグラムで面白い動画を探したりしているシーンが浮かび上がりました。(ちなみに、大学生はTiKToKはあまり見ていません。利用率2.0%程度です。)
学生にしてみれば、この時間に「面白い」コンテンツが遂に見つかったのですね。家族と一緒に楽しめて、何度見ても面白い、何度も見たいシーンが満載などの要件が満たされたコンテンツが。

3.テレビとインスタグラムの視聴態度、動機は極似している

最後に、動画視聴と消費の関係を研究をしている3年生のチームが9月に調査した「女子高校生の動画視聴態度( 87サンプル)」の結果を引用します。テレビとインスタグラムの視聴態度はとても似ていますね。「面白い動画を見つけたくて何となく見ているメディア」これ、テレビのミライのヒントにならないでしょうか?

境さんのコラムにある、「テレビ離れはコンテンツ次第」。
私もそう思います!
「テレビに、もっと若者に寄り添い近づいてほしい!」
次世代が「ハッピーなミライ」でありますように!!

インスタグラムの動画視聴態度

図1

テレビの視聴態度

図2

長文をここまで読み進んでいただきありがとうございました!

次回は、大学生の感想・意見の自由回答のテキストマイニングから見えた「今日俺」の魅力について解説させていただきます。

小々馬 敦