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YAHOO!ニュースで取り上げられたTVドラマ『今日から俺は!!』【学生視聴調査】の内容を報告!その②

December 10, 2018

昨日に続いて、TVドラマ『今日から俺は!!』【学生視聴調査】の報告をします。昨日(12月9日)放送された第9話の平均世帯視聴率は10.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と前回の10.6%を更新し番組最高視聴率を記録したそうです。

今日の朝、GOLDジムに行くとスタジオから番組の主題曲が溢れて聞こえてきました、中を見てみるとエアロビクスダンスのクラスが行われており、50代-60代の女性の方々が「男の勲章」の曲に乗ってエクササイズしていました。凄い!!今年の学生のクリパ(クリスマスパーティー)では、必ず誰かが「今日俺!!」のオープニング曲のダンスをパフォーマンスするくらいの人気らしいです。

来週(第10話)が最終回かと思うと寂しいですね。
Twitterでは「今日俺!!ロス」のつぶやきが多くなっています。

1. 福田雄一作品はブランドか?

この世代を超えたブーム現象は何なのかを知りたくて大学生を対象に調査を行ったのですが、今日は、境さんの記事「今日から俺は!!」大学生調査から見えたのは「福田雄一ブランド」、そして記事を読んでいただいた福田監督が自身のツイッターで呟かれた「福田雄一ブランド!?そんなものが存在するんですか!?」というコメントにお答えしたいと思います。

私の回答は、もちろん「福田雄一ブランドはあります!」(どこかで聞いたことがある・・・)順を追って解説します。

調査の概要は下記(12月9日記事)をご覧ください。

YAHOO!ニュースで取り上げられたTVドラマ『今日から俺は!!』【学生視聴調査】の内容を報告!その①

まず、境治さんの記事でも紹介されました「ワードクラウド」図をご覧ください。記事掲載後に分析の精度を上げてより見やすくしました。(User Localのテキストマイニングツールを利用して分析しています。)

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これは「番組を見ている理由、見どころを教えてください。」という質問に対する大学生119名の自由回答テキストをテキストマイニングプログラムで読み込みアウトプットされた図です。図の見方は特徴的な意味を持つ単語ほど大きく表記され、関係性が強いほど、近くに表記されます。境さんが指摘されていたように、中心に”面白い”という単語が大きく目立ちます。そして、見ている理由として、賀来賢人さん、伊藤健太郎さん、ムロツヨシさん、佐藤二朗さん、橋本環奈さんなど「福田組」のキャスティングを楽しみしていることが見て取れます。

次に、「共起キーワード」図をご覧ください。この図では、回答文章中の単語の出現パターンが似たものを線で結んでいます。出現数が多い語ほど大きくまた関係性が強いほど太い線で描画されます。この図からも「面白い」が番組を見る理由で、番組の魅力の中心にあることがわかります。

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2. 福田雄一ブランドのチカラ

では、もう少し踏み込んでみていきましょう。この番組を見る理由である「面白い」は、どのような要素で構成されているのでしょうか?分解すると下図の様なネットワークが見つかります。

 

面白

この図と、調査後に学生にインタビューした際の回答を加味して私が読み取ったのは、「『今日俺!!』はとにかく面白い!くだらないけど最高に笑えるキャストのアドリブを見るのが好きで、見ているコメディドラマです。福田雄一監督がつくる作品の世界観は面白いのでこのドラマを見ています。」という文脈です。

学生インタビューの際に強く感じたのは、学生がドラマを見る背景に、福田監督の作品の魅力、面白さに関する明快な共通理解があり、それが「期待を裏切られない信頼」「外せないドラマという確信」を形成していること。「今日から俺は!!」が福田作品であるという知覚が、期待通りに楽しい”Must to watch.”なドラマである信用を担保しています。

これは、ブランドとしての資質(ブランドエクイティ)の中で、最も重要な要素「知覚品質」にあたります。単に知名度が高いだけではブランドとしては不十分です。視聴者が番組に関して知っている知識(パーセプション)が、視聴を動機付けるだけのレベルに達していると、その知覚は付加価値を創造する”ブランドパワー”として評価できます。「福田監督の作品だから面白い、福田作品だからこその面白さが好き」という大学生との強いエンゲージメントが確かにありました。

次に「福田監督」そして「好きだから」を中心に、連想ネットワークを確認しました。どうですか?下のネットワーク図からは「福田監督の作品はキャストが魅力的で好きだから見る。」という文脈が読み取れないでしょうか?

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企業ブランドと商品ブランドの関係に例えて説明すると、ドラマタイトル「今日から俺は!!」は商品ブランドにあたり視聴者が選択する対象です。福田雄一ブランドは、商品を提供する企業ブランドに匹敵する役割で番組の出所と品質を保証しています。そして、福田雄一監督から連想されるのは、福田組のキャストによるアドリブの妙であり、これがドラマの品質として知覚されて視聴理由となっています。福田組として知られている出演者たちは、番組の品質を見える化していて、まるで企業の持っている特許技術や独自の成分に例えることができます。

テレビドラマの場合、企業ブランドの役割は「日テレ」ではないのか?というご意見もあるかと思いますが、大学生の意識の中には、福田作品というマスターブランドが知覚され、その傘下に「銀魂」「勇者ヨシヒコ」「斉木楠雄のΨ難」などのサブブランドが連なりファミリーを形成しています。「今日俺!!」もそのファミリーに加わり、福田雄一ブランド体系がさらに強化されたと捉えることができます。

ちなみに、学生インタビューの際に「日テレのドラマだから良いかなと思って見ました」という意見も聞けましたこともご報告しておきます。若者に対しては、テレビ局自体の知覚品質を形成するブランディングも必要ですね。

3. コンテンツ・ブランディングの未来
 福田雄一ブランドへの期待

思い出すと、20年数年前に某テレビ局から依頼され、「テレビドラマ枠のブランディング」に関する研究レポートを作成したことがあります。当時は、CXの”月9”がトレンディドラマ枠として人気ブランドのように扱われていました。このプロジェクトの目的は、ドラマの内容によって視聴率が上下ぶれしない様に、放送枠の視聴者を人気ドラマをシリーズ化するなどの手法で固定化したいというテレビ局の思惑がありました。その頃、ハリウッド映画もヒット作品をパート2、3とシリーズ化し新作の興行収入の安定化を狙っていました。私が提出したレポートは、オリジナル作品のファン層の期待値は、次回作に対してより高く、厳しく批判的になるので、単なるシリーズ化は、却ってオリジナル作品の価値を陳腐化してしまうケースが多いこと。故に、「スター・ウオーズ」のようにパート2というようにバージョンをアップするのでなく、ストーリーをオリジナルよりもバックデートする、背景ストーリーで理解を深めたり、または、スピンオフ形式でブランド拡張するなどのアプローチに移行していくのではないか、その背景には、視聴者は「誰が、どんな思いで、期待する世界観を提供してくれるのか」について確信できることを視聴の理由とするよになるという予測がありました。提言は、個別番組をシリーズ化してブランディングするよりも、番組を創出する放送局、スタジオ、監督の知覚品質を形成し、放送枠との連想を高めるべきという内容だったと思います。

私は、大学生が「今日俺!!」を語る際に、学生たちが大好きなジブリ作品映画のことを話す時と同様に、福田作品について知っていること、好きな理由を楽しげに語る様子を観察し、大学生にとって、福田雄一ブランドが形成されている!と実感したのです。

(株)日経BPコンサルティングが発表している国内のブランド価値評価ランキング「ブランド・ジャパン2018」で、スタジオジブリはGoogleに続きBtoC編の2位にランキングされています。過去にも2006年、2017年の2度、首位にランキングされているんですね。

https://consult.nikkeibp.co.jp/info/news/2018/0323bj/

一般消費者が評価をするランキングなのですが、主催社はスタジオジブリが、「オリジナルアニメーション映画」というカテゴリーと強く結びつき、その草分けでありオーソリティという知覚が形成されていること。フレンドリーさや、作り手の意図を感じさせるアウトスタンディング(独自性)が視聴者との強いエンゲージメントを構築していると分析しています。

私は、福田雄一作品は、スタジオジブリ作品と同様に「ブランド」に必須な資質条件を持ち合わせていると考えています。
「福田雄一ブランド」が「福田組」「アドリブの妙」などの連想から、テレビと映画をつなぐ新しいオリジナルのエンターテイメントカテゴリーを形成され、次世代に欠かすことのできないブランドになっていただきたいと願っています。

さて、今回の調査報告を切っ掛けとして、私が普段から大学生と時間を共にする中で感じたことや発見した私たち世代との価値観のギャップなどについてエッセイを書くことで皆さん(特にマーケッターやクリエーターの方々)に伝えたいと考えるようになりました。若者マーケティングに興味ある方、若者の価値観をリアルに理解したい方の一助になれば良いと思います。

エッセイのタイトルは「AgeMi!2030」。
来年、3月22日(金)に大学キャンパスで初開催する「学生と社会人が集いマーケティンやメディアの未来について対話するイベント」のタイトルネームです。(まだ正式発表前ですが、)

緊急発表!!2019年3月22日(金)若者のリアルなメディア生活がわかる。「AgeMi!マーケ!2030」開催

このイベントでは、「テレビのミライ」について若者(学生)からメディアやマーケッターの方々に提言してもらいます。この会場でも、「今日俺!!」が若者を引きつけた現象についてもっと話したいですね!

次回から、エッセイは、HPのメンバーブログに掲載します。
どうそ、ご期待ください!

今回も、読み進んでいただきありがとうございました!

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小々馬 敦