Member blog / メンバーブログ

トップページ > メンバーブログ

『AgeMi!マーケ!2030』セッションレポート【第5回】セッション④「動画最前線:バズった動画、若者の本心とは?」

March 27, 2019

2019322日(金)開催
産業能率大学 自由が丘キャンパス IVYホール
にて、
AgeMi!マーケ!20302020年メディアと若者の関係は?

図1

5回目の今日はセッション④を紹介します。

なお、《プログラム》のPDFを下記からダウンロードいただけますので合わせてご覧ください。

https://www.kogoma-brand.com/report/8676/

セッション内容、講演者紹介、記念対談(境治×小々馬 敦)、小々馬ゼミの活動紹介、若者研究者紹介(8社)など読み応えのある編集内容です。

セッション④「動画最前線:バズった動画、若者の本心とは?」
     〜若者はどんな動画に心を動かされ
      購買やブランド好意につながるのか!〜
 Unruly Japan 日本支社代表 取締役
 香川晴代 先生
 

 このセッションは、ポスト・ミレニアル世代と呼ばれるZ世代に焦点を当て、Z世代はどのような動画に心を動かされるのか。どうすれば購買行動やブランド好意へと繋がるのかを考えることを目的として行われました。

 Z世代は、スマートフォンと共に育ってきた一番最初の世代ということで 世界的にマーケターの関心を集めている。すでに社会進出しつつあり、自らの購買力のみならず、購買力がある親世代(X世代やY世代)にも強い影響力を持つ世代です。

 その前のミレニアル世代と比べて、メディアに対する態度や行動にど のような違いがあるのか、メディアプランニングやクリエイティブ制作をしていく上でどの程度この違いを考慮に入れるべきか について示唆溢れるセッションになりました。

図1

 アンルーリーについて、簡単にご紹介します。同社は2006年にロンドンに設立し世界20拠点で活躍している企業で、・動画SSP/アドネットワーク事業 ・動画コンテンツ評価サービス事業 ・動画視聴行動に関する調査を行なっています。その実績は、3兆ビューを越える動画視聴データ、200万人以上の動画に対する消費者心理データを保有しており、AdAgeが選ぶTOP100ブランドの90%以上がブランディング戦略にUnrulyを活用、これまでに16,000以上のキャンペーン実績があります。
小々馬ゼミの「若者の動画視聴と消費の関係性研究プロジェクト」において、ご指導をいただいています。

WEBサイト https://jp.unruly.co/

最初に、Z世代のメディア接触に関する特徴が紹介されました。
Z世代はスキップなどの選択肢がある広告に最も敏感な世代であるが、裏を返せば必ず再生されるプリロールや自動再生にはY世代よりも否定的であり、視聴すると報酬がある動画や スキップ可能な動画広告に対して肯定 的に捉えている。

スクリーンショット 2019-03-28 0.03.10

スクリーンショット 2019-03-28 0.05.35

 また、Z世代は集中力の持続(アテンションスパン)が「8秒」といわれているが、それには理由があり、スマートフォンやソーシャルメディアと共に育ってきた彼らは限られた時間の中であふれかえった情報を自分に必要かどうかを精査するために、独自のフィルターを持ち、自分にとって重要な情報かどうか選別しているからであると説明いただきました。
 では、Z世代にブランドを好きになってもらうには短い動画が最適なのかというとそういうわけではない。実際にブランド好意度が高くなるのは30秒以上の動画であることが分かっている。長尺動画が効果的なのは、視聴者が感情を動かされ、共感に至るまでには少し時間がかかるためである。

次に香川先生が紹介された「世代を問わず、人は幸せそうな人たちを動画でいきなり見るとスキップしたくなる」という現象には驚きがありました。この現象は、マリシャスエンビ―(悪性妬み)というのだそうですが、視聴者は忙しくプレロール動画を目にする際にイラっとすることもしばしば。動画開始5秒以内にすごく幸せそうな人々を広告で目の当たりにするとイライラしている自分の感情が対照的により強調されて、もっとイライラするものだそうです。その結果、幸せそうな人々から始まる動画広告はスキップされやすくなるそうです。

そして、「若者の間に動画がバズれば、心を掴み、売れるはず」との仮説が成立するのかについての検証が続きます。セッション②のゼミ生報告では、学生の間で動画がバズっても、そこで終わり、購買行動には繋がらない。なぜなら、私たちが欲しいのはおもしろいモノではなく、役に立つモノだからという発表がありましたが、それを裏付ける情報が紹介されました。

スクリーンショット 2019-03-28 0.16.27

スクリーンショット 2019-03-28 0.21.39スクリーンショット 2019-03-28 0.22.28

Z世代は最新のアプリや機能が提供されていることよりも、小売の基本要件を重視する傾向があり、IBM調査でも、Z世代の3分の2は、商品の品質や入手のしやすさ、商品そのものの価値が選定する際に最も重要な要件だと述べている。Z世代は実のところ「割引や返品送料無料など」の現実的な情報を参照していることを理解したうえで、期待に応えるコンテンツ対応をする必要があると解説をいただきました。

そして、今回の講演のために、「動画視と購買の関係、バズった動画はブランドに対する態度変容につながるのか」について独自に簡易調査を実施した結果が紹介されました。

スクリーンショット 2019-03-28 0.27.21

Unrulyの調査手法は、人の心を動かす要因に注目する神経心理学を応用する調査、感情の側面を科学的かつ多角的に分析する調査など多様であるが(同社WEBサイトを参照ください)、今回は動画視聴したZ世代パネルに対するアンケート調査をおこなった。
スクリーンショット 2019-03-28 0.33.40
セッションでは「TikTok」「ペプシJコーラ」「カルピスウオーター」の動画広告の3例が紹介されました。

「ペプシJコーラ」の動画は、小々馬ゼミが高校生・大学生に聞き取り調査をした結果、視聴率が高く、友人の間で話題になったと評価された素材であり、Unrulyさんに調査をしていただきました。結果は、楽しく感じたZ世代が多くいたものの、ストーリーが分かりにくく広告の製品について情報が分かるまでに時間がかかり混乱を感じたことでブランド好意度も低く、詳しく知りたいという検索意向に繋がりにくかったとみられます。

スクリーンショット 2019-03-28 0.42.05

スクリーンショット 2019-03-28 0.42.32

 小々馬 ゼミの聞き取り調査時にも、この動画はとても面白く人気が高く、拡散スピードも早かったのですが、商品に対する感情の変容、行動へ繋がりはほとんど見られませんでした。広告目標にも寄りますが、「バズった後のカスタージャーニー」が描かれていたとすると少し残念な結果となるかもしれません。

 

スクリーンショット 2019-03-28 0.43.46

スクリーンショット 2019-03-28 0.44.15

この3つの素材共通で見られたことは、若者に「ウケる!」動画は「はしゃぐような面白さ」の感情を引き出すこと。そして、ブランド好意につなげるには、シンプルでわかりやすい設定やストーリーで混乱させることなく商品のメッセージを伝えることと言えると思いました。

その後のパートでは、歴代バズった動画の中から5つの分析結果も報告された。(本記事巻末にスライドのダウンロード情報をおしらせしますので、参照ください。)

1.資生堂:メーク女子高生のヒミツ(2015年10月)
2.日経:魔法のインクで描く未来(2016年2月) 
    (注意:動画広告というよりニュースっぽい)
3.Honda:S660乗り方説明書【ノリセツ】(2015年)
4.サントリーC.C.レモン:忍者女子高生JapaneseSchoolgrilChase(2014年7月)
5.ダヴ:リアルビューティーID(2018年2月)
 
そして、Unrulyが有している世界的な調査からのノーム値との比較で日本人、Z世代を対象に動画でエンゲージするためのポイントが示唆されました。
 
スクリーンショット 2019-03-28 0.59.08

 

香川先生のご講演内容は、セッション②の学生報告内容とリンクし論理的に解説を加えていただき、ラップアップへと続いていく全体セッション構成の中で非常に有意義なセッションでした。

「若者の動画視聴と消費行動の関係研究」「動画広告の効果検証」は2009年も継続して研究していくテーマです。UnruLyさん共々、共同で調査研究していただくパートナーを探しております。ご興味のある方は是非、お知らせください!

香川先生、貴重な講義をありがとうございました。

参照情報

講演スライドを下記からダウンロードいただけます。
ご参照ください。

https://www.kogoma-brand.com/report/8754/

スクリーンショット 2019-03-26 1.44.22

 

 

 

 

 

次回は、セッション⑤「こうしてくれたら、テレビ見ます!!」
小々馬 ゼミ5期生(2年生)による報告です。

スクリーンショット 2019-03-23 23.36.59