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【連載企画】『Z世代リアルレポート』⑦「現在(いま)を大切にしたい時間意識と幸福感」

March 14, 2020

 今週からは、小々馬ゼミが6年間研究を受け継ぎ企業の実務家の方々にお伝えしている「Z世代の価値観と消費行動レポート」の中からテーマを抜粋して紹介していきます。イマドキの若者の価値観を理解していただくヒントになれば幸いです。
スクリーンショット 2020-03-14 14.19.36 今回は、「現在(いま)を大切にしたい時間意識と幸福感」とその背景にある生活環境についてご紹介します。

Z世代は、総じて「今この時を逃さずに、ずっとときめいていたい!」という時間意識と幸福感を持ち生活しています。

 この意識が強い背景には、生まれ育った環境要因の影響が考えられます。それは「未来が不確実な環境」です。旧来世代(人口が増加し経済が成長し続けていた昭和時代)の時間認識は、「明日は今日の延長線上に見えて、今日よりも明日の方が良い日」ということを信じることができました。
 しかしながら、Z世代は「VUCAワールド」と言われるように、未来の予測が不能な時代に育ってきました。

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 そうなると、本当に来るのか確信できない未来よりも、現在(いま)見えているこの時を逃さずに楽しみたい(=時めきたい)という意識が強くなります。

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昭和の時代の幸福感
 
この時間意識の違いは、世代による「幸福感」の違いとして説明できます。例えば、下図は、昭和(高度成長期)の幸福感を示しています。この時代は「成功や幸せのイメージ」は衆目一致していました。将来なりたい姿(ビジョン)を”To be”として描き、
そのために今の自分に足りないことを見極めて、何をなすべきなのかの(What)を決め、時間を掛けて達成(努力)するという人生観があり、車・家などの生活趣向商品やブランド(モノ)が成功・幸せをわかりやすく象徴していました。その頃は、1枚の写真で自分らしさを伝えることができました。
 ファッションも、カリスマと言われる芸能人を真似ることが主流で、世の中に皆が目指すわかりやすい「幸せのカタチのイメージ」がありました。

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 この時代では、将来の成功・幸せのために、現在(いま)を犠牲にして頑張るという意識がありました。社会の成長は確実に思えるので、努力すれば必ず報われると信じられた時代です。生活の中に占める労働時間の割合は大きく、残った時間の「余暇」を
より楽しむために、労働でより大きなアウトプット(金銭)を得たい意識が強く、価値観の中心に「お金」がありました。
 テレビで放映される人気ドラマの多くは、スポコン(スポーツ根性物語)もので、主人公が幼い頃から日々、楽しいことを犠牲にして努力を重ねていき成功に近づいていく物語でした。今、いっときの楽しさよりも、将来の大きな幸せの方が価値が大きいという価値観です。ちなみに、Z世代は「将来の大きな幸せ」という言葉はイメージできずピンときません。
 現在でも、経営戦略やキャリア開発の考え方は、To be(あるべき姿)とAs is(現状)のギャップを明確にして、未来の達成の姿からバックキャスティングしてWhat(すべきこと)に努力するロジカルなアプローチが主流ですが、未来が不確かなVUCAの時代には当てはまりが悪くになってきているように思えます。

Z世代の幸福感

 不確実性が大きな時代に育っているZ世代は「幸せのイメージ」が共通でなく、将来のあるべき姿も捉えにくいと思っています。
見通せない将来に幸せを求めるよりも、今、身の回りにある楽しいこと、他人の幸せそうなシーンを真似ることの方が、確実に幸福感を味わえるし、そもそも、今が幸せでないのに未来に幸せは来ない。(来ないから未来)幸せな毎日を続けていくことが未来が幸せな確実な流れという考え方が主流になっていきます。

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 「今、この時にときめき、ずっと幸福を感じていたい」だから、「あるべき自分(To Be)を目指すことよりも、今自分らしく生きる(Being)こと」、「何をすべきか(What)よりも、なぜそれをしたいのかの思い(Why)」に行動の重点が置かれます。
 自分らしさの表現は、1枚の写真で伝えることは難しく、インスタグラムに見られるように、楽しい瞬間のシーン、自分らしいトーン(色合い)をコラージュした”世界観”になります。
 生涯寿命が伸びていくこれからの時代、幸福感は人生をかけて達成した姿よりも、「素敵な思い出の総和」となっていくので、こうした傾向はより強くなっていくのではないかと考えます。

幸福感の進化

 下図は、6年前に1期生が描いた「幸せのカタチの進化」です。左側が「幸せを人生を通して追い求める」昭和時代で、縦に積まれた成功の象徴を他人に見てもらうことを前提とするウエディングケーキ型の幸福感です。
 右側が「幸せの形はみんな違っていいと考える」Z世代で、今の幸福感をみんなで同調・共有することで、幸せはもっと大きくなることを前提とするバースデーケーキ型の幸福感です。確かに最近の披露宴では、高く積まれた様式美のケーキはあまり見られなくなってきました。

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 例えば、Z世代も大好きな「人生ゲーム」も進化していくのではないでしょうか。Z世代は、最初にゴールすることの順位やゴール時にどれだけ大きな資産・お金を持っているかに関してはこだわりません。ゲームの勝ち負けよりも、ゲーム中にたくさん起こるイベントに一喜一憂する「時めき」を皆で共有し盛り上がれる、幸福感を同調できることが大好きです。
 6年前に1期生が出版した書籍『2020年マーケティングはこう変わる』では、自分たちで新しい人生ゲームを企画するとしたら、たくさんのイベントカードを持っている人が最も人生を楽しんだ人として尊重されるというようにしたいと書いていました。

 人生100年時代での幸福感は「思い出の総和」とすると、Z世代に限らず、たくさんのイベント・ときめきの瞬間を経験したいと志向する人々が増えていき、マーケティングのアプローチは進化していくと考えます。

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 Z世代の時間意識から見える新しいマーケティングのアプローチ
 - 消費行動の起点となるスキマ時間の攻略 –

 小々馬ゼミでは、2018年から新しいマーケティングのアプローチとして、「ずっと、ときめいていたい幸福感」が各世代に共通していることに注目し調査研究を行っています。
 旧世代の生活時間は、前述のように労働時間(インプット)と余暇(アウトプット)の時間に大別され生活行動もそれに沿っていました。テレビの番組は現在もこの生活時間に沿って編成されています。2019年に大学生の生活とメディア接触時間を日記式アンケート調査で見える化してみましたが、1週間の生活時間に、かたまりの時間より、細かなイベントがたくさん書き込まれていてバーコードのようなカタチをしていました。Z世代は細分化された一つひとつの時間を、イベント(ときめく時間)と表現します。そして、ポイントは、イベントとイベントの間にスキマとなる時間に「ときめくこと」をスマートフォンで探していることです。このスキマ時間(移動時、就寝前の時間など)が消費行動の起点になっていることが多いとこともわかりました。この調査の詳細は後日、別稿で報告したいと思います。

2020年。私たちは、スキマ時間を、ときめきの時間に変えて「ずっとときめき、幸福感を味わい続けていたい」というニーズに適合する情報の発信方法やどのような情報(クリエイティブ)が適しているのかに関して研究を続けていきます。

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次回は、Z世代の特徴のひとつである「コスパ・失敗したくない意識」とその背景にある情報環境に関して紹介します。

https://www.kogoma-brand.com/blog/9748/

【Z世代リアルレポート報告会 実施のお知らせ】

小々馬ゼミでは、「Z世代の価値観と消費行動」に関して企業の実務家の方々にご活用いただきたいと願っておりまして、ご要望をいただく企業様のオフィスを訪問させていただき学生による20-30分程度の報告プレゼンテーションとディスカッションの機会をいただいております。費用は掛かりません。
ご興味がございましたら、下記までお問い合わせください。

brand-m@mi.sanno.ac.jp