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【連載企画】『Z世代リアルレポート』⑨「直観から始まる消費行動」

April 09, 2020

小々馬ゼミが6年間研究を受け継いできた「Z世代の価値観と消費行動レポート」今週は「直観から始まる消費行動」に関してレポートします。

前回は「コスパ・失敗したくない意識とその背景」を紹介しました。
https://www.kogoma-brand.com/blog/9748/

要約すると、
・Z世代は、日々受け取る膨大な情報量を合理的に処理する術として”直観的に情報を処理”し、脳の負荷を低減していること。
・”直観的な情報処理”がもたらすのは、脳が心地良いと思う感覚であり、”ときめき”と言い換えられること。
・Z世代が”ときめく”のは自分が知っていることに新しい意味や感覚が付け加わった時。受け取る情報が多いからこそ「失敗したくない」という意識が強く、今まで見たこともない革新的な新商品よりも、既知で安心感のある定番商品を好む特徴がある。
などを紹介しました。

Z世代の情報接触は「直感」ではなく「直観」から始まります。
 Z世代は感覚的に行動している様に見えて、実は、目に見える情報を大切に物事を判断する特徴があります。「直感」というよりは、「直観」。2つの言葉の意味を調べてみると、以下のような相違を理解できました。

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「直感」は、心に響く深い感情で、行動につながる「思い」
 受けとる情報に心が動くことで、”〜したい”という態度・行動が起こりやすい感情。情報の意味を解釈しパーセプションが形成されることで行動へと繋がっています。
旧来の広告手法は、主に「直感(心の思い)」に訴求(アプローチ)し、態度・行動の変容を狙っているように思います。

「直観」は、脳で処理する浅い感情で、瞬間ときめく「想い」
 目に入ってくる視覚情報を「直観」で観て起こる感情。
瞬間的に自分の想い(価値観・世界観)に合致する情報だけを処理し、脳が心地良いかどうか判断をします。理解・解釈を省くので、”〜したい”という態度・行動に直ちにつながりません。
ちなみに「想い」とは波動でキャッチする五感のことで、Z世代はこの感覚を「世界観」と表現します。膨大な画像や映像をスマホのスクリーンで猛烈早くスクロールしながらも、瞬時に自分の世界観に合致する情報を見つけ出すことができます。

 たしかに、Z世代は広告を見る際に、広告に込められている暗喩や比喩的な表現を解釈しようとしません。「あのTV広告シリーズは面白くて好きだけど、何を伝えたいのか良くわからない。」という反応が多く、クリエーターが広告に込めたひねりや仕掛けは、効果が低いことが多いように思います。

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Z世代は、「直観・想い」⇒「直感・思い」⇒購買行動

 Z世代では、広告を見て心に響き直ちにEコマースで衝動買いしたという流れはあまり起こりません。
 目に入ってくる情報を「直観」で、瞬時に自分の「世界観」に合っているか判断し、心地良さを感じないとスルーします。
「世界観」に合致した情報を、とりあへずスマホに記憶させることは習慣となっており、その際には自分なりにカテゴライズしてフォルダー分けして記録します。そして、後ほどそれが気に掛かる、必要になった際に、「買っても後悔しないか?」不安感を解決するために、商品の使用感や服や化粧品ならば自分が着た際のイメージなどを信頼している人、好きなインフルエンサーやWEBの情報源などを探ぐり情報をつなげていき、少しずつ理解学習していくことでパーセプション(思い)が形成されていき、購買心が動きます。購買決定の前には、友人や家族から「いいと思う!似合ってる!」などの後押しコメントをもらい、購買行動へ移っていくという、かなり慎重な購買行動をしています。

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スマホの中に「考慮集合・選択集合」が在る
 上記の様にスマホに自分の脳を拡張し外部メモリーとして活用していますので、伝統的な購買行動モデル AIDMAでいうとM(Memory:記憶)はスマホのメモリーの中で行われカテゴリーニーズ毎に整理された購買候補のリスト(考慮集合・選択集合)はここに在ります。
 Z世代対象のマーケティングでは、視覚的に「直観」に伝えて「瞬時に世界観との合致を高めてスマホの中に保存してもらう」という最初の情報接触、「情報との出会い」をどのように企画するかが重要になります。

Z世代の「情報との出会い」パターン
大きく2つの型があります。
スクリーンショット 2020-04-09 12.40.10(1)なんとなく型
 スマホで、なんとなく面白いことがないかを見ている。
(欲しいものの情報を検索しているのではないので、検索ワード
は無い、または、覚えていない。)
すると、スクリーンに現れるてくるたくさんの画像の中から
自分の世界観に合うものを偶然見つけて”ときめく”。

(2)掛け算型
 知人や好きなインフルエンサーのインスタグラムやツイッター
を見ていると、自分が知っていることに繋がる新しい情報が
見つかり、知っていることの魅力が高まることに”ときめく”。

 いずれの場合も、「予期していなかった偶然の出会い」の瞬間に”ときめき”を感じています。

「偶然の出会いのときめき」が、Z世代の購買行動の起点

 私たちは、セレンディピティ(serendipity)という概念に注目しています。「おもいがけない発見や偶然の素敵な出会いの瞬間にときめきを大きくする。」という概念です。セレンディピティは、ネット上で情報を見ている時にも起こりますが、実はリアル店舗で頻繁に経験し、その際に購買に繋がりやすいということがわかりました。
 リアルな空間でセレンディピティが起こりやすいのは、皆が多様性を持っているからだと考えます。ショップで、自分の求めている世界観にあったモノに偶然出会う時には、今までの自分を少しアゲようと触発される感覚を持つことができます。
 Z世代にとって、ショップでの購買体験は”ときめくイベント”として大切です。便利ということだけで、Eコマースで購入することはありません。ショップで購買する方が、”気分がアガル”と思えば、時間と交通費を掛けてショップに行きます。

 次回は、今回に続き「セレンディピティ(偶然の出会い)から始まる幸せなショッピング」に関して、「こんな風にショッピングできたら幸せ!」というZ世代の想いを体系化した、幸せの消費行動モデル【EIEEM】について紹介します。お楽しみに!

【Z世代リアルレポート報告会 実施のお知らせ】

小々馬ゼミでは「Z世代の価値観と消費行動研究」を企業の実務家の方々にご活用いただきたいと願っております。ご要望をいただければ、企業様のオフィスを訪問させていただき学生による20-30分程度の報告プレゼンテーションとディスカッションの機会を持たせていただきます。費用は掛かりませんのでお気軽に下記までお問い合わせください。
*現在はZOOMなどの遠隔会議システムを利用し、オンラインミーティング形式で実施させていただいております。

brand-m@mi.sanno.ac.jp